第4章: 制御構文と関数:Pythonらしい書き方

この章では、Pythonの基本的な制御構文(条件分岐、ループ)と関数の定義方法について学びます。他の言語にも同様の機能はありますが、特にforループの振る舞いや、柔軟な引数の渡し方はPythonの大きな特徴です。これらの「Pythonらしい」書き方をマスターすることで、より簡潔で読みやすいコードを書けるようになります。

if/elif/elseによる条件分岐

Pythonの条件分岐はifelif(else ifの略)、elseを使って記述します。C言語やJavaのような波括弧{}は使わず、**コロン:とインデント(通常は半角スペース4つ)**でコードブロックを表現するのが最大の特徴です。

>>> score = 85 >>> if score >= 90: ... print('優') ... elif score >= 80: ... print('良') ... elif score >= 70: ... print('可') ... else: ... print('不可') ...

条件式にandornotといった論理演算子も使用できます。

>>> temp = 25 >>> is_sunny = True >>> if temp > 20 and is_sunny: ... print("お出かけ日和です") ... お出かけ日和です

forループとrange()、enumerate()

Pythonのforループは、他の言語のfor (int i = 0; i < 5; i++)といったカウンタ変数を使うスタイルとは少し異なります。リストやタプル、文字列などのイテラブル(反復可能)オブジェクトから要素を1つずつ取り出して処理を実行します。これは、Javaの拡張for文やC#のforeachに似ています。

>>> fruits = ['apple', 'banana', 'cherry'] >>> for fruit in fruits: ... print(f"I like {fruit}") ... I like apple I like banana I like cherry

`range()` 関数

決まった回数のループを実行したい場合は、range()関数が便利です。range(n)は0からn-1までの連続した数値を生成します。

>>> for i in range(5): ... print(i) ... 0 1 2 3 4

`enumerate()` 関数

ループ処理の中で、要素のインデックス(番号)と値の両方を使いたい場合があります。そのような時はenumerate()関数を使うと、コードが非常にスッキリします。これは非常にPythonらしい書き方の一つです。

>>> fruits = ['apple', 'banana', 'cherry'] >>> for i, fruit in enumerate(fruits): ... print(f"Index: {i}, Value: {fruit}") ... Index: 0, Value: apple Index: 1, Value: banana Index: 2, Value: cherry

whileループ

whileループは、指定された条件がTrueである間、処理を繰り返します。ループを途中で抜けたい場合はbreakを、現在の回の処理をスキップして次の回に進みたい場合はcontinueを使用します。

>>> n = 0 >>> while n < 5: ... print(n) ... n += 1 ... 0 1 2 3 4

関数の定義 (def)

関数はdefキーワードを使って定義します。ここでもコードブロックはコロン:とインデントで示します。値はreturnキーワードで返します。

>>> def greet(name): ... """指定された名前で挨拶を返す関数""" # これはDocstringと呼ばれるドキュメント文字列です ... return f"Hello, {name}!" ... >>> message = greet("Alice") >>> print(message) Hello, Alice!

引数の渡し方(位置引数、キーワード引数、デフォルト引数値)

Pythonの関数は、非常に柔軟な引数の渡し方ができます。

  • 位置引数 (Positional Arguments): 最も基本的な渡し方で、定義された順序で値を渡します。
  • キーワード引数 (Keyword Arguments): 引数名=値の形式で渡します。順序を問わないため、可読性が向上します。
  • デフォルト引数値 (Default Argument Values): 関数を定義する際に引数にデフォルト値を設定できます。呼び出し時にその引数が省略されると、デフォルト値が使われます。
>>> def describe_pet(animal_type, pet_name, owner_name="Taro"): ... print(f"私には {animal_type} がいます。") ... print(f"名前は {pet_name} で、飼い主は {owner_name} です。") ... # 位置引数のみで呼び出し >>> describe_pet("ハムスター", "ジャンボ") 私には ハムスター がいます。 名前は ジャンボ で、飼い主は Taro です。 # キーワード引数で呼び出し(順序を逆にしてもOK) >>> describe_pet(pet_name="ポチ", animal_type="犬") 私には 犬 がいます。 名前は ポチ で、飼い主は Taro です。 # デフォルト引数を持つ引数を指定して呼び出し >>> describe_pet("猫", "ミケ", "Hanako") 私には 猫 がいます。 名前は ミケ で、飼い主は Hanako です。

注意点: デフォルト引数を持つ引数は、持たない引数の後に定義する必要があります。

可変長引数 (\*args, \*\*kwargs)

関数の引数の数が可変である場合に対応するための仕組みです。

`*args`

任意の数の位置引数をタプルとして受け取ります。慣習的にargsという名前が使われます。

>>> def sum_all(*numbers): ... print(f"受け取ったタプル: {numbers}") ... total = 0 ... for num in numbers: ... total += num ... return total ... >>> print(sum_all(1, 2, 3)) 受け取ったタプル: (1, 2, 3) 6 >>> print(sum_all(10, 20, 30, 40, 50)) 受け取ったタプル: (10, 20, 30, 40, 50) 150

`**kwargs`

任意の数のキーワード引数を辞書として受け取ります。慣習的にkwargs (keyword arguments) という名前が使われます。

>>> def print_profile(**user_info): ... print(f"受け取った辞書: {user_info}") ... for key, value in user_info.items(): ... print(f"{key}: {value}") ... >>> print_profile(name="Sato", age=28, city="Tokyo") 受け取った辞書: {'name': 'Sato', 'age': 28, 'city': 'Tokyo'} name: Sato age: 28 city: Tokyo

ラムダ式(Lambda expressions)

lambdaキーワードを使うと、名前のない小さな無名関数を定義できます。複雑な処理には向きませんが、sorted関数のキーを指定したり、GUIのコールバック関数を定義したりと、簡単な処理をその場で記述したい場合に非常に便利です。

構文: lambda 引数: 式

# 通常の関数で2つの数を足す >>> def add(x, y): ... return x + y ... # ラムダ式で同じ処理を定義 >>> add_lambda = lambda x, y: x + y >>> print(add_lambda(3, 5)) 8 # sorted関数のキーとして利用する例 >>> students = [('Taro', 80), ('Jiro', 95), ('Saburo', 75)] # 成績(タプルの2番目の要素)でソートする >>> sorted_students = sorted(students, key=lambda student: student[1], reverse=True) >>> print(sorted_students) [('Jiro', 95), ('Taro', 80), ('Saburo', 75)]